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竹林の屋敷

あふれでるパッションが投げ捨てられる、そんなブログ。

【歌詞解釈】『宝石になった日』-BUMP OF CHICKEN は死別の唄だと思う

歌詞解釈

増えていく 君の知らない世界 増えていく 君を知らない世界
君の知っている僕は 会いたいよ 

歌詞はコチラを参照→http://j-lyric.net/artist/a000673/l0396dd.html

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まずは楽曲紹介。

 

『宝石になった日』はBUMP OF CHICKENの8枚目のアルバム『Butterflies』収録の楽曲。シングルカットはされていませんが、PVが作られています。Youtubeでも視聴化。

 

全編通して一定のコード進行でクリーンギターのアルペジオが鳴っているシンプルな構成。近年のBUMPに見られるキラキラの曲調という印象です。

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『宝石になった日』は死別の唄です。少なくとも私にとっては、疑う余地もなく。筆者の人生経験を持ってすれば、それ以外の読み方はできません。「ライブの日のこと」とか、ダメです。多様な解釈可能性が藤原基央の詞の魅力の一つですが、それだけはダメです。浅いですよ!!

 

まず、「宝石」とはなんでしょうか?

 

 「あの温もりが 何度も聴いた声が 君がいた事が 宝石」と唄っています。

 

作詞の藤原基央は「君」を多用します。「僕」と「君」だけを20年歌ってきたといっても過言ではありません。

 

しばしば、「君」は「もう一人の僕」や「理想の自分」として唄われますが、「あの温もり」、「何度も聴いた声」を感じ、聞いていることから、ここでの「君」は明らかに別個体として捉えるのが妥当かと思います。

 

そして、君が「いた」事が、宝石となった。死かどうかはともかくともして、君との別れを余儀なくされ、君との思い出が、忘れられない、確固としたものとして、刻まれたのです。

 

宝石は美しく、その形を長く留めます。他者とのかけがえのない思い出の形容として、これ以上なく適当に思われます。特に、宝石は、色あせず、確定不変です。単なる「別れ」なら、思い出は更新され得ります。偶然の再会があるかもしれないし、どこかで噂を聞くかもしれない。しかし、死別したものとの別れは、一生新しくならない。死はものの時間を止めるからです。

 

死別の唄だと思う根拠の一つは宝石という形容にあります。宝石って、なんだか秘めるものがないですか? いろんないろ~んな全てがギュっと収まったような……。角度によって輝き方が変わるとことか、単一的じゃない、次元の入り乱れた思い出が宿っているように思います。

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そして、この曲には、死を体験した時の感情、心の流れがありありと描かれています。大切な人の死を経験したことのある方は、共感していただけると思います。

 

一つは、別れの後の虚無感と、時間においていかれる感覚。歩を進めることができず、時の流れの上に乗って無理やり進まされているような感覚です。徒歩や自転車で確実の進んでいくのでなく、電車やバスに乗って、「自分は止まっている。でも確かに進んでる」と感じる時と似ています。BUMPの曲では「銀河鉄道」で唄われています。

 

あとどれくらいしたら普通に戻るんだろう
時計の音に運ばれていく

 

 太陽は何も知らない顔 完璧な朝を連れてくる

 

全自動で続く日常をなんとなく でも止めないよ 

 

ここで唄われるのは、「異常」です。その中で、「どれくらいしたら普通に戻るんだろう」と思います。でも、同時に「日常」でもあります。BUMP OF CHICKENの『トーチ』でいう、「次々襲い来る普通の日々」。心にぽっかりと穴が開いて、もう進めないと思ってしまっても、どんなに大きな絶望が圧し掛かっても、日常は全自動ですすんで、朝がやってくる。とんでもなく大きな虚無感を感じる異常の中でも、強制的に日常を進まされる感覚が唄われます。

 

もう一つ。辛い辛い別れは、とんでもない寂しさを残しますが、実際のところ、私たちはしばらくすれば「普通」に戻ってしまいます。「あの寂しさはなんだったのか」と思うほど、(少なくとも表面上は)忘れたように生きていきます。さらに時が進むと、やがて、別れた大切な人の記憶が薄れていってします。

 

私も経験しました。私の場合は、悲しくなりました。「自分の寂しさはこんなものだったのか?」「あの人のことを本当に大切に思っていたのだろうか?」「もっと寂しく思わなければいけないんじゃないのか?」と。普通の日々を送ることに罪悪感を覚えます。

 

『宝石になった日』ではその気持ちも解決して、前に進もうとします。

 

忘れたように 笑っていても 涙越えても ずっと夢に見る

 

こんなに寂しいから 大丈夫だと思う
時間に負けない 寂しさがあるから 

 

瞬きの中 消えた稲妻 雨が流した 君の足跡
瞬きの中 掌の下 言葉の隙間 残る君の足跡 

 

忘れたように、生きていく自分。時間と共に薄れていく記憶、思い出。「君は夜の空を切り裂いて 僕を照らし出した稲妻」として唄われた愛しい稲妻は、消えてしまい、「君の足跡」は流れていってしまいます。

 

それでも、それでも、こんなに寂しく思っている自分がいる。涙を流すことも少なくなったけれど、いつまでも夢に見る。寂しさは時間に負けず続いている。「君の足跡」はいつまでも、確かに残っているんだ。そう唄います。力強いです。特に、「こんなに寂しいから 大丈夫だと思う」、この歌詞が大好きです。寂しさを正の方向に捉えています。こんなに寂しく思えるような人がいたのだから、自分は大丈夫だ、と。

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最後に、記事のはじめに載せた歌詞、

 

増えていく 君の知らない世界 増えていく 君を知らない世界
君の知っている僕は 会いたいよ 

 

について。BUMP以外にも日本語詞の曲を色々聞いてきましたが、最も天才的だと思う歌詞の一つです。

 

「増えていく 君の知らない世界」。君がもうこの世にいないことを、こうも表現できるのかと思いました。時の流れと共に、世界が変わってゆき、君がこの世界から離れていく様が描かれます。「世界」は、そこに存在する自分を意識した言葉だと思います。「君の知らない世界」、その世界を、当然生きている自分は知っています。《君が知らない》《僕が知っている》世界が増えていくことは、自分と君との離別を印象付けます。誰しも、大切な人と世界を共有したいですよね。

 

そして、「増えていく 君を知らない世界」。次は世界からの目線になります。君を知らない世界が増える、それはつまり君の存在を必要としない世界が増えるということです。世界から、君の濃度が薄くなっていく様を描きます。「世界が君を知らない」って、すごく大それた言い方に思えませんか? 世界に対する君の存在が大きすぎるというか……、それだけ、自分にとっての君が大事な存在だったのだと思います。

 

極めつけは、「君の知ってる僕は 会いたいよ」。世界は変わって、君の知らないことも増えたけど、君の死から、僕は変わらず君の知ってる僕のままで、君を思っている。ストレートな「会いたい」に、某震える人と比べ物にならない説得力が宿ります。

 

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Butterflies(通常盤)

Butterflies(通常盤)

 

 

 

ここにあげた歌詞以外にも、素晴らしい歌詞はたくさんあります。短絡的に捉えることなく是非テキストを読みこんで自身の解釈を深めていただければと思います。